
アナフィラキシーに備える新しい選択肢とは
食物アレルギーのあるお子さんを保育園に預けるとき、「もしも」への備えは保護者にとって切実なテーマではないでしょうか。従来の自己注射薬「エピペン」に加え、日本初の点鼻タイプ「ネフィー」が新たに登場し、選択肢が広がりました。本記事では、それぞれの特徴や違い、保育園で円滑に対応してもらうためのポイントを、アレルギー専門医の視点から整理してお伝えします。事前の正しい知識が、いざという時の落ち着いた行動につながります。
この記事の要点まとめ
- アナフィラキシーの緊急対応薬には、注射型「エピペン」と点鼻型「ネフィー」の2種類がある
- 投与方法や処方対象体重が異なるため、薬剤の選択は医師への相談が大切
- 保育園では症状の判断基準や使用手順を園と事前に共有しておくことが重要
目次
- アナフィラキシー緊急対応薬の役割と基本知識
- 新薬「ネフィー」と従来薬「エピペン」の違いと特徴
- 保育園での緊急時対応をスムーズに進めるためのポイント
- アレルギー専門医へ相談するタイミングと当院のサポート
アナフィラキシー緊急対応薬の役割と基本知識

アナフィラキシーは、食物や薬剤、ハチ毒などをきっかけに、皮膚・呼吸器・消化器・循環器といった複数の臓器に短時間で症状が及ぶことがある、全身性の重いアレルギー反応とされています。じんましん、息苦しさ、嘔吐、血圧低下などが急速に進む場合があり、初期段階での落ち着いた対応が重要だと考えられています。
緊急時の速やかな対応が求められる理由
補助治療薬の主成分となるのはアドレナリン(エピネフリン)です。血管を収縮させて血圧低下を抑え、気管支を広げて呼吸を助ける働きがあるとされ、症状の進行に対する初期対応として用いられます。日本のガイドラインでも、呼吸が苦しい、繰り返し嘔吐する、ぐったりするといったサインが見られた段階で、速やかに使用することが推奨されています。
近年は「判断に迷う段階こそが使い時」という考え方が広がってきました。使うか迷ったら使用を検討する、という姿勢が大切だと言われています。使用後にいったん症状が落ち着いて見えても再燃する場合があるため、必ず救急要請を行い、医療機関を受診してください。
保育園や学校における初期対応の重要性
保護者が常にそばにいられない保育園や学校では、異変に気づいた職員が落ち着いて初動を取れるかどうかが大きなポイントになります。日頃から園と「どの症状が出たら使用するか」「誰がどう動くか」をすり合わせ、対応マニュアルを整えておくことが、現場の安心感につながります。
新薬「ネフィー」と従来薬「エピペン」の違いと特徴

国内で長く使われてきたアナフィラキシー補助治療薬が、自己注射タイプの「エピペン」です。これに加わったのが、2024年に承認された日本初の点鼻型アドレナリン製剤「ネフィー(neffy)」。注射が苦手な方や、介助する周囲の心理的負担に配慮した新しい選択肢として注目を集めています。
投与方法と心理的負担の比較
エピペンは、太ももの外側に針を刺して筋肉内にアドレナリンを注入する自己注射薬です。使用方法は確立されている一方、針への抵抗感や「正しく打てるだろうか」という不安から、保護者や保育士が躊躇するケースもあると指摘されてきました。
対するネフィーは、片方の鼻の穴にデバイスを差し込み、ボタンを押すことで鼻粘膜からアドレナリンを吸収させる仕組みです。針を使わない分、介助する側の心理的ハードルが下がりやすく、お子さんに痛みを与えにくい点が特徴とされています。ただし、鼻づまりがひどい場合の吸収については医師の判断が必要になります。
処方対象となる体重の目安
両者は処方対象の体重基準が異なります。エピペンには体重15kg以上向けの0.15mg製剤と、30kg以上向けの0.3mg製剤が用意されています。一方ネフィーは、現時点で主に成人および一定以上の体重のお子さんが対象とされており、年齢や体重によって処方の可否が分かれます。4歳前後のお子さんが該当するかどうかは、診察時に医師へご確認ください。
携帯・保管方法における留意点
アドレナリン製剤は高温や直射日光に弱いため、保管温度の管理が共通の注意点となります。夏場の保育園では、空調の効いた室内で、職員が把握しやすい場所に置く工夫が求められます。エピペンは専用ケースで携帯し、ネフィーは個包装のデバイスで持ち運びやすい形状ですが、いずれも凍結を避け、使用期限を定期的に確認しておくことが大切です。
保育園での緊急時対応をスムーズに進めるためのポイント
お薬を園に預けるだけでは、緊急時の備えとして十分とは言えません。保育士の方々が安心して動けるよう、保護者からの情報提供と日頃の連携が欠かせない要素になります。
園の先生と共有しておきたい情報と連携方法
まずは「アレルギーの原因食物」「過去の症状の出方」「使用する薬剤と保管場所」を一枚の書面にまとめて園に提出しましょう。担任だけでなく複数の職員に共有してもらうことで、誰が居合わせても動ける体制になります。注射への抵抗感を打ち明けてくれた保育士の方には、点鼻薬という選択肢があることを情報提供しつつ、最終的な処方は医師の判断によることもあわせて伝えると、対話が前向きに進みやすくなります。
落ち着いた対応のための事前の確認事項
園内で緊急対応マニュアルを整え、症状の判断基準・薬剤の使用手順・救急要請の流れ・保護者への連絡方法を明文化しておくと安心です。可能であればトレーナー(練習用デバイス)を使い、年に数回は手順を確認する機会を設けるとよいでしょう。「迷った時は使用を検討し、必ず救急車を呼ぶ」というシンプルな原則を共有しておくと、現場の判断負担が軽くなります。
アレルギー専門医へ相談するタイミングと当院のサポート
保育園入園を控えている、症状の経過が気になる、薬剤の選択で迷っている――こうした場面では、早めに専門医へ相談することをおすすめします。
未来を見据えたお子さんのためのアレルギー診療
京都市上京区にあります当クリニックでは、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医・日本専門医機構認定小児科専門医として、目の前の症状だけでなく、成長やこれからの生活まで見据えた診療を心がけています。乳児期の湿疹から食物アレルギー、喘息へとつながる「アレルギーマーチ」を意識し、発症予防や重症化への備えを大切にしながら、ご家族とともに長期的に寄り添う姿勢を大事にしています。アナフィラキシー対応薬の処方相談や、保育園提出書類のご相談も承りますので、丸太町駅近郊で専門医をお探しの際はお気軽にご来院ください。
山梨医科大学付属病院小児科
山梨赤十字病院小児科
済生会宇都宮病院小児科 副医長
韮崎市立病院小児科 医長
浜松赤十字病院小児科 部長
神奈川県立こども医療センターアレルギー科
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 小児科講師
かわだ小児科アレルギークリニック 院長
日本専門医機構認定小児科専門医
